詩「父」
父親が 腰を痛めている 年齢もあるけど 歩きすぎなのだ ある時なんか 2万歩も歩いたと 母に 誇らしげに言ったみたいだけど 息子としては ほどほどに歩いてほしい
超えゆく壁としての 父が存在しない
父におぶってもらったこと 電柱から電柱へ あそこの電柱まで おぶるから そこから歩いてね と言われたのは つい昨日のことのよう
父の弟さんから 譲り受けた 岳の文字 今 俺は 歌という 高い山に登り 疲れて 足を止めている この山は とてつもなく 高く険しい 続けるのは困難だ 四年以上 歌い続けてきたが 次の一歩が重い
父が 差し入れにくれた 満洲の餃子で スープを作る 温かいものが からだに流れ込んでくる
満洲の ぎょうざが もたらすものよ
父は 自分の父親については語る 自分の母親についても語る でも弟さんのことは ほとんど語っているのを 見たことがない
双極性の父は 筋ジストロフィーの弟を 大学時代に亡くしている 父にとって 弟を失うことは 半身をもがれる痛みだったはずだ その弟さんについて 俺は その病気以外 何も知らない
物語の源泉を 自分に置いては駄目だ なぜ この東京に生まれ この東京の 辺境の 稲城で 31年間生活してこれたか ここを問うことから 君ははじまる 父を知ることは 君に 新しい道を教える