読むと出す

自分の中にある言葉を形にしています。最近のマイブームは、鷹揚に、ごゆるりと、です♪

詩「水」

一滴ずつ

一滴ずつ 蛇口から水が漏れる 大した量でないけれど 一日も経てば 充分な量だ ぼくたちは そのような形で 自分自身を すりこぼしている

タコツボのような

タコツボのような この時代 誰が 誰を罵っているのかも 分からない 行き着く先の孤独を 経験しなければ ひととつながれないのか

善を

善を 一滴ずつ 水瓶に溜めてゆく

水の使い手

ロックンロールと 火は とても 深く関係している だが 俺はあくまで 水の使い手 火はおさえこむまでだ

わたしは

俺にとっての 原風景は 汚れた水をきれいにする 水の神の足跡だ わたしは 神も希望も光も信じない しかし 水の神だけは 本当にいるのだと 信じている

流し込んで

苦しみも 痛みも 疲れも わたしも この地面に すべて 流し込んで

シャワーで

シャワーで からだの汚れを落としている時 ふと思う 心の汚れも シャワーだけで くまなく 落としてくれたら どんなに楽だろうと でもそれができないということは 決して 悪い事ばかりじゃないのかもな

月日は

月日は 誰しもを ゆくべき道へと 押し流す たとえ どんなに抵抗しようとも この流れに抗うことはできない

水のようなエネルギーが

芸術は爆発だと いう人もいるけど 歌は爆発ではない 歌は 瀑布 上空から まっさかさまに 水のようなエネルギーが 流れ落ちる

その渦中にいて

やむことのない雨 やむことのない嵐 やむことのない音 やむことのない声 ぼくたちは その渦中にいて そこでぐるぐる回ってる

潜るのだ

俺は高みではなく 深みへと 視線を下ろす この先ではなく いま ここの下に 目を向ける そして さらに下の深海へ 潜るのだ

小さな波が

小さな波が やがて 全てを飲み込む 大波となり 人は海の藻屑となる だが 決してそれで死ぬことはない 自分のちっぽけさを知り 海の巨大さに畏怖する

水で濡れた鏡に

水で濡れた鏡に 映るぼくの輪郭は あまりに不明瞭で それゆえに 自分が 自分でなくなってしまう

偶然が重なると

水の上を 滑空するカワセミ 偶然が重なると 出会えたりする そうなのだ 今生きて 出会っている人たちも 偶然の重なり合いと 呼ぶしかないほどのものなのだ

ハープは水辺がよく似合う

ハープは水辺がよく似合う 蛇のようなとぐろを巻いた煩悩が 現出する日も お帰りなさいと 彼方の方角へと 鎮めてくれる

質も関係なく

質も関係なく ただ書くことだけが 呼吸のようにあって 水面という現実に潜って また浮上しての繰り返し 学校で習った水泳の意味が 本当に分かるまで 膨大な時間がかかった

水を運ぶように

そこから何を汲み取ったか 人の言葉を聞くときには 井戸から 水を運ぶように ゆっくりと

かつてあった背景は

懐かしかった日々も 苦しかった日々も かつてあった背景は 水が流れるごとく 消えてゆく

その通りだ

母から言われた カラオケは命の源だねと たしかに その通りだ

ぽたぽたと

ぽたぽたと 水が落ちゆくかのように 言葉を紡げたら

その思いが

その思いが 強ければ強いほど 岩盤を穿つ 水となりうる 行く末を見るな ただ目の前の一点に 集中するんだ

その先へ向かう

水の中に落ちても 息ができる 浮上せずとも 全身を満たしながら その先へ向かう

この不調続きの中で

この不調続きの中で ハチワンダイバーが 将棋盤に潜ったように 俺も 声の中に 潜りたい

絶望の中で

絶望の中で 飲む水こそ このからだの奥に 浸透する

つたない過去を

つたない過去を 水に流せるのなら そうしたいと思う でも人は 記憶の生き物だから やったことは消えないし 忘れてはいけない

泣けないのなら

泣けないのなら 泣かなくていい いつか必ず 泣ける日が来るから それまで ただひたすら 君だけの愛を重ねていこう

重なるとき

燃え滾っているような水が この世界にはあって 相矛盾した 二つの要素が 重なるとき 奇跡が起きる

遊ぶことだけが

水浸しになったこと 夜が来るなんて考えもしないで 遊んでいたあの頃 遊ぶことだけが 僕らの取り柄で 遊んでいたから 僕らでいられた 苦しい時は 思い出すんだよ 何が足りないのかを

この渇きを

この渇きを 潤すような水の言葉 待ち望んでいた けどそんなものはなかった 誰の言葉も こころの奥の底には 届かなかった 唯一のたよりは 自分だけ 自分の言葉だけが 自分の深い活力を 目覚めさせる

立ち止まりなさいと

ここにある貯蔵庫が 水辺に棲んでいる生き物が 僕たちに 教えてくれることがある 変色したように見える風景も 立ち止まりなさいと